SAS(睡眠時無呼吸症候群)に対するCPAP(持続陽圧呼吸療法)の個別化治療~簡単にCPAPをあきらめないで~
国内に1000万人近く存在すると推定される睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、夜間の呼吸苦や日中の眠気といった自覚症状や倦怠感ほか日中のパフォーマンスの悪化にとどまらず、心臓病、脳卒中、大動脈解離といった命に係わる病気から、高血圧、糖尿病といった生活習慣病、さらには認知機能低下や緑内障に至るまで、働き盛りの方を中心に、全身に影響を及ぼします。
治療を要するSASに対する標準治療が持続陽圧呼吸療法(CPAP)といわゆる治療です。本邦では終夜睡眠ポリグラフィという検査で無呼吸と低呼吸の総和が1時間あたり20を超えるか、簡易的検査で40を超える方に対して保険治療にてこの治療が提供されています。現在では、CPAP以外に口腔内装具や側臥位睡眠や耳鼻科的口腔外科的手術療法などのアプローチがあり、また最近では重症SASの中でCPAPに耐えられない方に舌下神経刺激療法というデバイスの植え込み手術治療が始められています。ただCPAP治療がSASの標準治療であることには変わりありません。
それでもCPAP治療をはじめてみて、どうも合わない、続けられそうにないと思われる方が一定数存在するのは事実ですが、すぐにCPAPをあきらめないで下さい。
CPAP治療の個別化戦略として、
・CPAPの機種の使い分け*
・CPAPの圧設定
・CPAPのアルゴリズム設定
・CPAPより多機能な、ASVと言われる呼吸補助治療の検討
などを上手に使い分けることが必要です。
(*当院では複数のCPAPメーカーの製品を扱っています)
また、SASの原因として、
- 覚醒しやすさ(覚醒閾値)
- 呼吸の不安定性(呼吸調節系の異常)
- 解剖学的異常(鼻~喉にかけての異常)
- 気道の易虚脱性(代償性低下)
の4つのメカニズムが提唱されており、一人一人に対してどの要素がどの程度関わっているかによって、CPAPの使い分けと補助療法の併用で、うまくCPAPが使えるようにすることが可能であります。
以上、SAS治療の中心となるCPAPを快適に使用していただくための、「CPAPの個別化治療」に当院では取り組んでおります。現在CPAP治療をしているけれどどうもしっくりいかない方、もう諦めてしまおうかなと思っている方、一度やめてしまったけれどやっぱり再開しないといけないかなと思っている方、どうぞお気軽にご相談下さい。