睡眠障害
睡眠障害とは

今の世の中では職場や学校、家庭などにいろいろなストレスがあふれており、子供から大人まであらゆる世代で睡眠に関する問題をかかえている人が少なくありません。その睡眠の問題というのも、いわゆる不眠のみではないのです。睡眠障害は文字通り、睡眠に関する障害で、以下の四つに分けられます(睡眠障害国際分類)
- 睡眠異常:睡眠自体が病気である場合
不眠症、過眠症、ナルコレプシー、睡眠相後退症候群、睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群を含む)、があります。なお不眠症には、入眠困難、早朝覚醒、中途覚醒、熟眠障害に分類され、その病態に応じて治療薬(睡眠薬)を使い分けます。 - 睡眠時随伴症状:睡眠中に見られる異常な行動
夜驚症、夜尿症、催眠麻痺、周期性四肢運動、REM睡眠行動障害、むずむず脚症候群などがあります。 - 内科・精神科的睡眠障害:精神病や不安障害、うつ病などに伴う不眠や過眠
- その他:未だ分類が正確になされていない、短時間睡眠障害、長時間睡眠者など
こんなお悩みありませんか?
- いびきをかいて恥ずかしい思いをされている方
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睡眠呼吸障害とは
睡眠呼吸障害(睡眠時呼吸障害)とは、睡眠中に呼吸の低下をきたす病気であり、最も多い睡眠時無呼吸症候群(閉塞性睡眠時無呼吸症候群、中枢性無呼吸症候群)だけではなく、チェーン・ストークス呼吸症候群、睡眠時低換気症候群、上気道抵抗症候群があります。
睡眠の質を高めるために~
(1)睡眠の質とノンレム睡眠・レム睡眠
はじめに
昨今、大リーグの大谷翔平選手の取り組みでも紹介され、「睡眠」に対する世の中の関心は高まっており、睡眠は「量」のみならず、いかにその「質」を高めるかに注目が集まっています。私たちは、障害の3分の1は眠って過ごしています。健康志向が高まる中、睡眠に熱い視線が注がれるのは理にかなっていると考えられます。
「睡眠の質」とは
「睡眠の質」とは、単に「何時間寝たか(睡眠時間)」だけでなく、①深い睡眠(ノンレム睡眠)の量 ②レム睡眠の割合 ③睡眠の安定性 の3つの要素が重要になります。 睡眠には、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」という二つの種類があることはご存じの方もいらっしゃるかと思います。入眠するとしばらくするのが「ノンレム睡眠」で、その後に睡眠が浅くなり「レム睡眠」に移行し、またノンレム睡眠に入り、この周期は一般的に90分のサイクルとされています。「ノンレム睡眠」の中で、N1→N2→N3と徐々に深くなっていくわけですが、それぞれN1は「うとうと」、N2は「すやすや」、N3は「ぐっすり」という具合です。

「ノンレム睡眠」の役割
「ノンレム睡眠」の役割は、脳の休息と成長ホルモンの分泌の2つに表されます。脳の休息は、日中にたまった脳の老廃物(ゴミ)を脳脊髄液から排出することができます。老廃物の一つにアミロイドβというものがあり、認知症の6割を占めるアルツハイマー病の原因の一つとして知られていますが、睡眠が十分でないとこの老廃物が溜まってしまうことで認知症につながる報告も数多くなされています。大脳の活動と休止を繰り返すことでストレスの解消につながります。加えてこの中で、新たに加わった記憶をいるものといらないものの整理し、固定強化につなげます。同時に成長ホルモンは子どもの発育を促すホルモンですが、実は成人になっても分泌されており、細胞の修復で肌や髪などの美容効果や、疲労回復、免疫力改善、筋肉や骨量増加、脂肪減少といったアンチエイジングホルモンとして知られており、ノンレム睡眠は成長ホルモンを増やすことでこういった効果があります。このノンレム睡眠の前半、とくに最初の1サイクルに多く出現するため、この1サイクル約90分を「黄金の90分」とも言われています。
「レム睡眠」の役割
一方、「レム睡眠」では体の筋肉を完全に緩める一方で、脳の活動は活発になります。このためレム睡眠中は比較的はっきりした夢を見ることが知られています。夢の内容に合わせて体が勝手に暴走しないように、体の脱力をさせているのは神様の作った‘安全対策‘なのか非常に神秘的です。レム睡眠の役割はまだ明らかになってないことが多いのですが、最近の研究によって、レム睡眠の量が少ないほど学習成績が悪い(ノンレム睡眠量との関係はなし)など、情報の整理に重要な役割を果たることがわかってきました。
こう考えると、朝すっきり目が覚めるのはどちらでしょうか。答えはレム睡眠の時です。レム睡眠は、脳波活動が比較的活発になり、覚醒への準備状態といえます。テストの成績やクリエイティブな発想はレム睡眠直後が優れているという研究も報告されています。逆にレム睡眠の割合が多すぎると、夜中に目覚めたり、睡眠時間を確保しても寝た気がしなかったりすることがあるのです。理想的なレム睡眠の割合は20~25%といわれています。ただ新生児や乳児は各々50%程度が一般的です。なぜなら、赤ちゃんにとっては何事も初体験。脳が処理すべき情報が多いことから、レム睡眠が長く現れるのです。一方で、脳が休んでいるため覚醒準備ができていない深いノンレム睡眠で起こされるとぼんやりした状態になります。
はじめに睡眠の質においては、ノンレム睡眠、レム睡眠、睡眠の安定性の要素が重要であるとお話しましたが、ノンレム睡眠とレム睡眠が比較的安定的なリズムで現れるのが理想といえます。さらにわかりやすく「睡眠の質」を理解する場合に、以下の5点を思い浮かべてください。
- 寝つきの良さ(入眠の速さ)
布団に入ってからすぐ眠れるか(理想は15〜20分以内)。 - 途中で起きないこと(中途覚醒が少ない)
夜中に何度も目が覚めないこと。覚めてもすぐ眠れる状態が望ましい。。 - 深い眠り(ノンレム睡眠)の量
ぐっすり眠れて、朝起きたときに「よく眠れた」と感じる状態 - 起床時のスッキリ感
寝起きが良く、疲れが取れていると感じること。 - 昼間の眠気の少なさ
日中に強い眠気がない場合は、質の高い睡眠がとれている可能性が高いです。
参考文献
- 日本睡眠学会編集 「睡眠学 第2版」朝倉書店 2020年
- 柳沢正史監修 「睡眠の超基本」朝日新聞出版 2024年
- 櫻井武著 「睡眠学テクニック」日本実業出版社 2024年
- 日本睡眠学会HP 睡眠の基礎 https://jssr.jp/basicofsleep